俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
東條さん宅を出て自分のアパートへと戻ったときには、夜の十時半を過ぎていた。

二階への階段を上った先で自分の部屋の前にうずくまっている人影を見つけ、私は一瞬ビクリとする。

けれどその怪しい人影が足音に気づき顔を上げたのを見て、違う緊張感が私を襲った。

「おせーよ。どこふらついてたんだよ、二時間も待たせやがって」

立ち上がり大きく伸びをした周防さんが、私を見据えながらこちらにやって来る。

「に、二時間って……、GGプロダクションの新年会はどうしたんですか?」

「クライアントから急な呼び出しが入ったっつって逃げてきた。ったく、後でフォロー入れにいかなくちゃならねーじゃねーか」

もしかしたら周防さんが今夜尋ねてくるかもしれないとは思っていたけれど、まさか新年会をドタキャンしてまで即行で来てくれていたとは思いもしなかった。

「す、すみませ……」

さすがに申し訳ない気になって謝ろうとしたら、周防さんはものすごく不機嫌そうな顔でこちらに近づき、人差し指で私の額をグリグリと押した。

「ほ、ん、と、に、ふざけんなよお前。今朝こっちの話も聞かず出てったあげく、電話もメッセージもブロックしやがって。そのうえわざわざ小宮山とイチャついてるの見せつけにきて、何がしたいんだよお前は! 俺にどんだけ恨みがあるんだっつーの!」

「痛い痛い! ってか押さないでください! 落ちる~!」
 
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