俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
口調と共にどんどん圧の籠もっていく人差し指に押され、私はじりじりと階段の手前まで後ずさってしまった。

あと半歩で階段から転げ落ちそうになったとき、周防さんが指を離し私の腰を掴んで強引に引き寄せた。

その勢いで私はポスっと彼の懐に埋もれ、そのまま両腕で抱きしめられる。

「こんなムカつくの初めてだよ。ってか、こんなにムカつくのこの世でお前だけだマジで」

抱きしめる腕の優しさとは裏腹に恨み節たっぷりの台詞を吐かれ、私は「ひぇっ」と身を硬くする。けれど。

「嫌われようが誤解されようが逃げられようが、他の奴ならなんとも思わないんだよ。お前だけだ。逃げられたら焦るし、誤解されたら困惑するし、嫌われたらすげー悲しくなるのは。そんで俺の感情こんなにグチャグチャにして知らんぷりするお前が、世界一ムカつく」

続けて言われた台詞は素直で切ない気持ちにあふれていて、私はギュウっと胸が締めつけられた。

周防さんがどんな気持ちで惚れ薬の嘘をつき始めたのかはわからない。けれど、少なくとも今の彼の気持ちは分かる気がした。

「わ……私だって。私だって人生で一番怒ってます。どうして惚れ薬が効いてるフリなんてしてたんですか? 私、キスも同棲も男の人をこんなに好きになっちゃったのも初めてなんですよ? まさか、からかってたなんて言いませんよね?」

彼の背に手をまわし、強く掴んでから顔を上げて言った。

まっすぐ見つめた周防さんの顔は驚きと真剣さの混じった表情を浮かべており、私はじっと彼の次の言葉を待つ。

そのとき、一階でドアの開く音が聞こえ人の出てくる気配がした。

揃って肩を跳ねさせた私と周防さんはどちらともなく体を離し、私は自分の部屋の鍵を開けて「どうぞ」と彼を招き入れた。
 
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