俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「あー、つっかれたぁ~」
そんなことをぼやきながら誰かがリフレッシュスペースに入ってきた。
振り返ってその人物を目にとめて、私の背筋がヒヤッと冷える。
「ひぃっ、周防さん!」
どうやら休憩にきたらしい周防さんは、自分の肩に手を当てコキコキと首を鳴らしながらこちらへと近づいてくる。そして私のことを見つけると、切れ長の目に意地悪そうな光を湛えてまっすぐ私の前までやって来た。
「何さぼってんだ、大福。ジュースなんか飲んで太ってる暇があったら馬車馬のように働け」
「さぼってな……あいたっ!」
「口ごたえ禁止」
いきなり因縁をつけられたうえデコピンまでかまされて、私は途端に涙目になる。本当この人苦手だ。なんで私にばっか意地悪するの?
「お疲れ様です、周防さん」
「ああ、最上もいたのか。おつかれ」
椅子に座っていた和花ちゃんに気づいた周防さんは、普通に挨拶をする。同じ同期のはずなのに、この扱いの違いはなんなんだろう。
そのとき、和花ちゃんの方へ顔を向けた周防さんの視線がテーブルの上で留まったのを見て、私の肝が冷えた。
ヤバい。テーブルの上には惚れ薬の小瓶が置きっぱなしになっている。こんなの見つかった日にはどれだけ馬鹿にされるかわかったもんじゃない。