目の前に、憂鬱な影が現れた。
「ナ、ナイトメア。これが、ナイトメア・・・。」
話には聞いていたが、実際に本物を見るのははじめてだった。その姿を見て、あらためて自分が家に帰る事は出来ないと感じた。同時に、開き直りからか、抵抗しようとする意志が芽生えはじめていた。
「さぁ、かかってきなさい。でもね、ただじゃやられないわよ。」
鞄からヤンダルに造ってもらったナイフを取り出した。
「このナイフは特別製よ。あ、あんたなんか、すぐにやられちゃうんだからね。」
腰は引けていたが、威勢だけは一人前だった。
しかし、ナイトメアに言葉は通じなかった。息を荒くし、ロドの様子を伺っている。
「はぁ、はぁ。」
逆にロドから、ナイトメアの様子を伺う事は出来なかった。塗りつぶされたように、漆黒の闇になっているその体は、感情を感じさせる部分がなかった。どこが、どのように動くのか、そんな事もいっさいわからない。ただ、荒く呼吸されている。それだけしか、わからなかった。
それでも、必死にチャンスを伺った。わずかでも、パクの元に帰れるチャンスがあるのなら、それを手に入れたかった。
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