勝手
「なぁ、これでいいか?」
返事はない。
「ちっ、本当に都合のいい時しか出てこないんだな、テミロ。こっちは、お前の頼みを聞いてやっているんだから、お前も、たまには俺の言う事を聞けってんだ。」
それでも返事はない。ヤンダルの声だけが、工場に響いていた。
「せっかく、鎌をつくってやったって言うのになぁ。挨拶も来やしねえ。本当に勝手なもんだよな。しかし、あれだな、お前の言う通り時間の流れを止められはするけど・・・、いいのかね?」
寂しそうな顔になった。
「思い出ってのは、人それぞれって言うけどよ、お前にとっては、自分への思い出よりも、村の、この村の未来の方が大切って事なのか?」
さらに、寂しそうな顔になった。ヤンダルには、何か聞こえたようだった。
「そっか、そう言う訳かよ。俺は、パクになんて言えばいいんだよ。お前がそんなもの見つけなきゃ、こんな哀しい運命を背負わなかったのによ。」
天井を眺め、涙がこぼれないようにした。
「さようなら、ロド。」
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