分岐点
本当に偶然だった。ナイトメアの様子を伺う事は、何度も言うように出来ない。だから、ロドは自分の直感を信じた。自分のタイミングで、自分が思う所に、ナイフを突き立てた。
ナイトメアは、まさか人間から先に来るとは思っていなかったのだろう。ナイフを自ら受け入れる形になってしまった。力のないロドでも、ナイフを根本まで押し込む事が出来た。それでも、苦しんでいる様子はない。荒く呼吸しているだけだ。ただ、その呼吸が乱れている事は、ロドにも感じる事が出来た。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
―――やった。苦しんでる。これなら、きっと、きっと家に帰れるわ。
すえた臭いが漂いはじめた。あまりの臭さに、思わずナイフから手を離してしまった。
「うっ。」
一気に気分が悪くなる。思わず、その場に吐いてしまった。そして、嘔吐されたものと同じように、ナイトメアも気がつけば崩れていた。
「パ、パク。お母さん、家に帰れるよ。」
安心で、涙がこぼれた。
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