すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
手離せなかった睡眠薬は余程の事がない限り飲むのをやめたのは今も続いている。
いつもの癖でベッドの端の方で丸くなって眠っていたが睡眠薬を飲んでいない時は眠りが浅く、智大が指先で藍里の頬に触れた感覚で目を覚ますことも多々あった。

「ん……」

「……悪い、起こした」

ばつが悪そうな顔をして謝る智大をぼんやり見上げてゆるゆると首を振る。
智大がベッドに上がり横になるのをただ黙って見ていると智大が軽く頭を掻いて、それから伺うように藍里を見た。

「今日も来れるか?」

智大の誤解が解けても尚、藍里の智大への恐怖は多少薄れたとしても完全になくなっていない。
男女の体格差がはっきり分かるようなスキンシップは藍里にとって一番の恐怖なのだが、智大はそれを理解していてもどうしようもなく抱きしめたくなるらしい。

暫し思考した後、藍里は、少しだけなら……。と頷くと、智大は安心したように目を細めて腕を広げた。

男である智大から抱きしめにいくよりも、心の準備が出来た藍里が自ら来た方が恐怖も少しくらいは和らぐのでは?だそうだが、自分から抱きしめられに腕の中に収まりに行くのはとても恥ずかしかった。
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