すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
藍里の頬の熱が落ち着いてから車から下りて、やっとモールへと買い物へ向かった。
ようやく伝え合えた気持ちのおかげで隣を歩くお互いの距離は先程の公園よりも近く、いつもは離れていた手も今は強くも弱くもない絶妙な力加減で握られていた。

ショッピングモールを歩いていると途中で以前に、素敵だな。と思ったトレンチ風のワンピースを飾っていたお店の前を通ったがそのワンピースはすでになく、春らしいコーデの服が飾られていた。

「服が欲しいのか?」

「あ……ううん、見てただけ」

今回の服も、素敵だな。と思ったけど、大人っぽいデザインだったので小柄な自分には似合わないのは分かっている。
智大はその飾られた服を一瞥すると、お前には似合わないな。と前回と同じことを呟いた。

「や……やっぱり私には似合わないよね」

分かってはいても、面と向かって言われるのはやはり傷付く。
肩を落としていると智大は明後日の方向を見ていて、やがて何かを見付けると藍里の手を引いて歩き出した。

「と、智君……?」

「あそこの服なら似合う」

言われて智大が向かっている場所へと目をやると、そこは小柄な女性用の服が置いてあるブティックがあった。

「行ってこい」

「え?」

「すみません、こいつに似合いそうなの一式見繕ってください」

「一式!?」

「かしこまりました。さあ、こちらにどうぞー」

背中を押され、近くにいた店員を捕まえ言付けると智大はさっさと店を出てしまう。
慌てて追いかけようとしてもすぐに横についた店員に素敵な笑顔で微笑まれ、藍里はなす統べなく店の奥に連れていかれるのだった。
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