すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「藍……」

「ど……うしたの……っ!?シャワー入ったのに何でこんなに冷たいの!?」

藍里が掴んだ智大の手は指先まで冷えていた。
暖かくなってきた今の時期、使ったのがシャワーだけだとしてもここまで冷えることはないだろう。

少しでも智大の手が温まるようにと必死に両手で握ったり擦ったりしていると、智大がぼそっと呟いた。

「シャワーと言っても、浴びたのは水だったからな……」

「水っ!?」

目を丸くして唖然としながら智大を見上げると、智大は困ったような顔をしていた。

今日は寒くはないが決して暑くもない。
そんな日に、しかも今から出掛けるというのに水を浴びて風邪でもひいたらどうするのかと藍里は心配になった。

「どうしてそんなこと……何かあったの?」

「別に何もない。これは昔からの習慣だから気にするな」

「習慣……?」

「少しでも冷静になるために……頭を冷やすためにやってる」

「頭を冷やすって……やっぱりお仕事で何かあったの?」

「仕事?」

藍里の言葉に首を傾げた智大に帰ってきてからどこか様子がおかしいと感じたこと、仕事で何かあったんじゃないかと思っていたことを話した。
すると智大は、あー……。と声を漏らしたと思うと、気まずそうに視線を反らした。
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