すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「別に何かあったわけじゃなくて、今日は少し緊張してるんだ。それで前みたいに素っ気ない態度になりそうだったから、頭を冷やしてた」

「緊張って……どうして?」

「……まあ、今日は色々あるんだよ」

言葉を濁して、決してそれ以上を語ろうとしない智大に藍里は少し不満に思いながらも大人しく身を引いた。
そんな藍里の手を握り返した智大は、後で分かるから。と耳元で囁くとそっとその手を引いた。

「そろそろ出掛けるか。準備は出来たか?」

「あ……うん、大丈夫」

藍里が頷くと、智大は藍里の手を離さずにそのまま歩きだした。
気になることはたくさんあって少しだけモヤモヤとした気持ちになったけれど、藍里は数回首を横に振ってデートに気持ちを切り替えようとしながら智大に手を引かれるまま外に出た。

目的地へと向かう車内でも智大の態度はどこかいつもと違っていて、何となくそわそわしている。

それからどれくらい長いこと走っていたのか、車に乗って二時間ほど経った頃、ようやく目的地についたらしく車を駐車場に停めると智大がシートベルトを外したので藍理もそれに習った。

「ここ……?」

目の前にあるのは不思議な形の大きな建物で、藍里は目を何度も瞬かせた。

「行くぞ」

「あ、うん……」

少し乱暴に手を掴まれ、足早に入り口に向かう智大はさっきよりも余裕がないように見える。
本当に今日はどうしたのかと聞きたいが智大は話してくれないだろうと思い、藍里は少しでも智大が落ち着いてくれることを願うのだった。
< 310 / 420 >

この作品をシェア

pagetop