すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「なんかね、汐見さんに負けたらダメだって思ったの。智君のことが大好きすぎて、あんなこと言ったんだろうなって。
……と、智君のこと一番好きなのは私なんだから、負けられないって思って必死で……」

恥ずかしくなりながらそう言ってからチラッと智大に視線を向けると、智大は嬉しそうに微笑んでいた。
その微笑みがさらに恥ずかしく感じて顔を隠そうとした瞬間、お腹に激しい振動を感じて思わず背中を丸めてお腹に手を添えた。

「っ!」

「藍里?」

「お、腹……思いきり蹴られて……」

今まではポコポコと軽い振動を感じるくらいだったのに、今回はとても強い振動だった。
力強いその蹴りは赤ちゃんの成長と元気さが分かっていつもなら安心するのだけれど、精神的にも肉体的にも疲労している今の状況での激しい胎動は辛く感じた。

何度も内側から蹴られて藍里が微かに眉を潜めると、智大が藍里に、触るぞ?と声をかけてからゆっくりお腹に触れてポンポンと軽く叩いた。

「おい、今日はもう疲れてるんだ。運動は明日にして、今日は一緒に寝てやれ」

智大がそう言うと赤ちゃんはその後、二回ほど強くお腹を蹴って後は静かになってしまった。
智大の声が聞こえたのか、一定の間隔でお腹に振動を与えたのが良かったのかは分からないが、大人しくなってくれたことに藍里は安堵の息をはいた。
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