生簀の恋は青い空を知っているか。

「もうすぐ学生も夏休みになるもんね」
「夏休み、良いなあ……。松葉ちゃんは浅黄さんと花火行かないの?」
「ええ……人混みを好きな人には見えない……」
「「確かに」」

二人の声が被った。

普通の電車ですら回避しようとするあの人に、一緒に花火を見に行きませんかとは誘う勇気はない。

それにホテル業界が花火大会に連動して忙しくなるのなら、浅黄さんも多忙なはずだ。春夏秋冬、日本の四季によって客の入りも変わる、らしい。

お互い、全然仕事の話をしないので分からないけれど。

花火大会で混む前に、と早めに解散をしてわたしは電車に乗る。ちらほらと浴衣が見られる。

< 182 / 331 >

この作品をシェア

pagetop