生簀の恋は青い空を知っているか。

久しぶりに見た、というより会うのが二度目のその人に近付いて挨拶をする。

「こんばんは、お仕事帰りですか?」
「ええ。浅黄さんを送ってきた帰りです」
「あ、お疲れ様です」

頭を下げる。二人が休日出勤している間、わたしは友人たちと飲んでいた。ちょっとだけ罪悪感が湧く……のはおかしいか。

「ありがとうございます。乗っていきますか?」
「え? 菊池さん今から帰るとこですよね? 一人で帰れますから大丈夫です」
「ちょっとの距離なので、然程変わらないです」

扉を開けられ、さあさあと促されて、乗ってしまった。これが分別の出来ない子供だったら、どれだけ母親に怒られていただろう。

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