生簀の恋は青い空を知っているか。
いや、子供だったら押し切って逃げてしまうのなんて簡単だったろうな。
助手席でシートベルトをしめながら思った。
「今日都内で花火大会だったんですよね」
「そうなんです。こっちは繁忙期です」
「その話をさっき鼎……御堂の次女の子と話してて」
菊池さんの相槌に、どこか固いものを感じた。わたしは何かおかしいことを言っただろうか。
「松葉さん、御堂の家と知り合いなんですね」
「中学が一緒で……」
最中さんや菊池さんの勤める株式会社キプリナスホテルと同業になるわけだけれど、特に敵対しているとかは聞かない。