生簀の恋は青い空を知っているか。

そう思ったら、何だか馬鹿らしくて笑えた。

ノックが聞こえてすぐに扉が開けられる。何の為のノックなのか、といつも思うけれど浅黄さんには通用しない。

「何かあったのか?」

開口早々にそう尋ねられる。何かあったから開けたのは浅黄さんの方ではないのか。

「菊池から電話があった。君に謝ってた」
「あ、そうだ。さっき帰るときに菊池さんとすれ違って、そしたら送ってくれました」
「それからどうして謝罪の事態に陥るんだよ」

呆れた顔で首を傾げる。

いや、まあそれは、いろいろ、ねえ。

誤魔化す言葉が上手く浮かばなくて、閉口する。

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