生簀の恋は青い空を知っているか。

木暮さんは苦笑しながらそう言って、じゃあと去っていった。浅黄さんの方を見上げる。

「言ったら絶対来なかっただろ」
「来ないも何も、拒否権ありませんでしたし……」
「ああ、今日は俺の好き勝手になるんだったか」
「なんかその権利の名前どんどん幅が広くなってません?」

さあ? とすっとぼけた顔で浅黄さんは返事をして、わたしの首に腕をかけた。急に近くなった距離に慌てる。

「な、なんですか」
「ラスボス倒しに行くぞ」
「ラスボス!? 早くないですか」

声を潜められたので、潜めて返す。
来たばかりでラスボスとは。

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