生簀の恋は青い空を知っているか。

振り向いてそう言われる。今まで言われたことのないそれに、どう反応するのが正解なのか考えてしまった。

「今でもその理由は分からないけど、会う機会があるとさっきみたいに何かと言われる。君はその火の粉を被っただけだ」
「でも、言われたのは間違ったことじゃありませんでした」
「俺ら、夫婦なんだけど」

リビングを前に立ち止まる。わたしも廊下で止まった。

夫婦。愛を誓った者同士。
わたしは貰ってばかりいるけれど。

「はい」

それに異論はなく、頷いてみせる。浅黄さんは口を開いた。

「俺らのかたちを、他人にとやかく言われる筋合いはないだろ」

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