生簀の恋は青い空を知っているか。

「腫れて……ますか」
「飲みすぎだろ」
「だと思います」

はは、と乾いた笑いが漏れる。その間に浅黄さんはネクタイを結んでいた。

そうだ、わたしも帰らないと。

「これ、鍵」

言われてそちらを向くと同時に投げられた金属片ふたつ。慌てて手を伸ばしてキャッチした。

「鍵……?」
「エントランスとこの部屋の」
「え、いや、一緒に出ていきますから」

寧ろ今すぐ出ていこうと思っている。
部屋の隅に置かれた自分のバッグを見つけて持ち上げる。

「やるっつってんだから自分で閉めろよ」
「な、何故……」

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