生簀の恋は青い空を知っているか。

そんな横暴な。

わたしの言葉は華麗に流され、浅黄さんは携帯と上着を持って玄関へと行ってしまう。

「あ、そういえば、いつ」

急に振り向くので、足をきゅっと止める。目が合って数秒。

この人、本当に綺麗な顔をしている。

「おい、聞いてんのか」
「すみません、なんですか」
「いつ」
「いつ……?」
「引っ越し」

ヒッコシ。
何を言ってるんだ、とその顔を見つめる。

ピピ、と何かの電子音がして、その時間が動いた。

「引越し先ここだから。ちゃんと住所メモして帰れよ」
「あの、そのこと、なんですけど」

玄関の扉を開けた浅黄さんがこちらを見た。

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