生簀の恋は青い空を知っているか。

デパートを出ると、月が光っていた。くっきりとした輪郭に強いものを感じる。

雨は降りそうもない。

お兄ちゃんに会いに行こう。あの日と天気は違うけれど、わたしはお兄ちゃんに言わないといけない。

その前に、と携帯を出した。
まだ仕事してるかな。年末だから皆忙しいのは共通だろう。そう思いながらも、電話をかけた。

卒業してからもこうして、わたしは理美に電話をかけたなあ。

信号が赤だった。呼び出し音が聞こえる。
音が途切れた。

『もしもし』

声が聞こえた。
電話をかけたのはわたしの方なのに、それが奇跡みたいに思えた。

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