生簀の恋は青い空を知っているか。

黙って考えていると、頬を撫でられた。浅黄さんも黙っているので、されるがままにしておく。

「あ!」

思い出したわたしの大きな声に浅黄さんが驚いたようにぴたりと止まる。

「わたしの荷物は、どこに」
「鞄ならそこにある」

すぐ側の棚の上に置いてあった。手を伸ばすと、浅黄さんが立ち上がって取ってくれる。
浅黄さんを使える時がくるなんて。

「ありがとうございます」
「携帯なら充電切れてると思うけど」
「えっと……」

探しているのは引換券だ。指輪の。
仕事終わりの鞄の中は水筒と貴重品くらいしか入っていない。財布の中を見ると、レシートと一緒にそれが現れた。

< 307 / 331 >

この作品をシェア

pagetop