生簀の恋は青い空を知っているか。

浅黄さんが再度リビングへと戻る足音がした。

髪を整えてリビングへと顔を出す。

「もう良いのか」
「浅黄さん、誕生日おめでとう」

ソファーに座る浅黄さんの横に座り、小さな四角い箱をその手のひらに乗せた。

口を少しだけ開けたままその箱を見入る浅黄さん。

「セーターの毛玉か?」
「そんなもの箱に詰めませんよ!?」
「冗談に決まってんだろ」

浅黄さんは見慣れているであろうその箱を開けて、やっぱりそれほど感動してもいなかった。

「つけて」
「え?」

その箱が手元に返ってくる。

指輪を摘まんで出す。

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