生簀の恋は青い空を知っているか。
ん、と差し出された左手を掴んだ。薬指にそっと指輪を入れる。
ちゃんと嵌って安心した。
その手をじっと見ていると、浅黄さんも同じようにして見ていた。
「似合う?」
得意げに聞いてくるので、頷いて返す。わたしの方を見て、浅黄さんがふっと笑った。
ぐっと背中を抱き寄せられて、唇が重なる。
少しで離れて、顔を見上げる。
「今日行くのやめるか」
そう言って覆い被さってくるのに抵抗して、ソファーから抜け出す。
部屋を出てエレベーターに乗ると、浅黄さんが左手をじっと見ていた。
それを盗み見ることが出来た。