生簀の恋は青い空を知っているか。

気に入ってくれたなら、嬉しい。

車に乗ってすぐに緊張が戻ってきた。
自分の服装を見る。なんか、これ。

「似合ってる、それが一番だ」

わたしがまた着替えると言い始めると思ったらしい浅黄さんが半笑いで言ってくる。全然心がこもっていない。

「じゃあさっきのセーターは?」
「似合ってた」
「その前のハイネックは?」
「忘れた」
「ちょっと」

エンジンが掛けられて、車が出る。桜が咲き始めていた。

うちから三十分ほどのところに、その家はあった。
いや、家というか……。

「屋敷ですね……」

和装の門を見上げる。きちんと表札には最中と書いてあった。

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