生簀の恋は青い空を知っているか。

浅黄さんのご実家。わたしの実家の数倍大きい。

「インターホンはどこ?」
「鳴らさないけど中にある」

門を開けて浅黄さんが言った。そこには古き良き日本家屋が広がっていた。
専属の庭師でもいるのだろう。植物が賑わっている。

浅黄さんに着いていくと、お屋敷の入口が見えた。

確かにインターホンがあったけれど、浅黄さんは鳴らさずに鍵を使って扉を開く。

何も言わずに玄関に入ると、ちょうどこちらに向かっていた女性と目が合った。

「あら、おかえり」
「ただいま」

浅黄さんが答えて、わたしの背中を少し押した。

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