生簀の恋は青い空を知っているか。
わたしもその隣に座って、ガラス戸の向こうに顔を向ける。大きい庭が広がっていた。
「トイレ行ってくる」
「え、そんな。一人にしないでください」
「取って食われるわけじゃないだろ」
「浅黄さん!」
行かないで―、と言ったけれど浅黄さんは立ち上がって行ってしまった。
ぽつんとそこに残される。再度庭の方を見る。池がある。
すっと人影が見えて、姿勢を正す。
現れたのは着物を着た女性だった。
「お、お邪魔してます……」
たぶん浅黄さんのお祖母さんだ。わたしよりも少し背が低い。
「おいでなさい」
誘われた。