生簀の恋は青い空を知っているか。
縁側から池を観察する。そういえば浅黄さんに何も言わずにここに来ちゃったな、と思い出した。
すぐ後に後ろから足音がして、振り向いた。
「お祖母様、松葉を勝手に連れて行かないでください」
浅黄さんが呆れた顔をしてわたしの手を掴む。
「あら良いじゃないの、たまには若い人と話したいのよ」
唇を尖らせるふりをしながら笑ってお祖母さんが部屋に入っていく。
「あ、ありがとうございました!」
その背中に声をかけると、振り向かずにひらりひらりと手を振られた。格好良い。
「知らない人間にふらふらついて行くな」