Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
あたしを残して無人にするところ、あたしが逃げられないという確信があるんだろう。


こんな金属の手枷を自力で千切るなんてどんな怪力でも無理だし、上手く動かせないこの足で逃げ出すのも不可能だろう。


誰かが助けにくる希望もない。


ナオが生きていればナオが助けに来てくれたかもしれないけど、そのナオはもういない。


─コツ…コツ…
─カツ…カツ…


扉の向こう二人分の足音が聞こえる。


「…殺すに決まってるやろ」


「余計なことしたら琴吹組に狙われる」


「余計なこと?必要なことの間違いやろ」


…そこで会話は終わり、足音も扉の前で止まった。


あたしを拉致した犯人が入ってくる。
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