【短】愛を語るよりも早く、その口唇を味わいたい。
「さーきちゃん」

「…なんですか?望夢せんぱい」

「今日さ、一緒に帰んない?」


きょとん


彼女は一瞬そんな間を作ってから、にっこり笑って、

「いいですよ?」


と言ってくれた。


『なんで私がせんぱいと帰らないと行けないんですか!』


そんな風にお断りされてしまうかと内心ドキドキしてたから、当たり前のように取り付けられた約束に、顔がにやけてしまいそうだったけど、ぐっと我慢して「ありがと」とだけ返して、部活に戻った。


…その時は知らなかったんだ。
彼女の頬がほんのりと朱色に染まっていたなんて。



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