花時の贈り物
「……心配かけてごめんね。采花は?」
「采花は麻野たちと一緒に射的やってる。探しに行くって言い出したけど、采花の方が迷子になりかねないから俺が探しに来た」
掴まれた腕が熱い。私よりも瀬川くんの体温の方が高いからだろうか。
真っ赤な提灯に照らされた道をふたりで歩きながら、時折ぽつりぽつりと会話をしていく。腕は未だに掴まれたままだった。
「悠理は危なっかしいよな」
「気が付いたらみんないなくて……ごめんね」
「じゃー、せっかくだし、あれ食ってこうよ」
瀬川くんが指差した方向にはあんず飴の屋台。
采花たちは射的を楽しんでいるから、俺たちもちょっとくらい寄り道しようと笑って提案してくれた。
今思うとあれははぐれて迷惑をかけたと落ち込んだ私に気を遣って言ってくれたのかもしれない。
あんず飴を食べるのは小学生以来だった。水飴にコーティングされた甘酸っぱいスモモは疲れた体を癒してくれる。
「瀬川くん、食べきれる?」
クジを引いて出た数の分だけあんず飴が貰えるお店で、私はひとつだけだった。
瀬川くんは三つ貰えて、左手にはモナカに乗ったあんず飴をふたつ。右手でもうひとつのあんず飴を持って食べていた。
「こんなことなら、先に俺が買って悠理にあげればよかったな」
「これはあれだね。采花にも分けようってことかも」
「悠理は優しいなー。しゃーない。采花にも分けるか」
采花と合流して、瀬川くんがあんず飴をひとつ渡すと目を輝かせながら喜んだ。
「やったー! あんず飴大好き!」
「お前見てると小学生に戻った気分になる」
「……ふたつもらってやる!」
瀬川くんの左手に乗ったふたつのあんず飴は采花によって回収されてしまった。
「お前なぁ!」
「代わりに瀬川には私が射的でゲットしたキャラメルをあげるよ」
「まー、いいけど。ひとつ食べたし」
少しして楽しげな音楽が流れ始めた。
私たちはお祭りの輪から外れて地域の人たちの盆踊りを眺める。
みんな笑っていて、楽しそうだった。こういうのは初めてだった私は見てるだけなのに不思議とわくわくして心が躍った。