花時の贈り物
***


高校生活最後の体育祭前日。

毎年クラスごとに布が配られて、クラスカラーのハチマキを自分で作るという決まりがある。裁縫が苦手な私は三年生の年もうまく作れず、前日までかかってしまっていた。


「私も手伝おうか?」
「ううん、大丈夫。采花は体育祭の前日ミーティングがあるでしょ?」

体育祭実行委員の采花は忙しい。三年生は特にいろいろな業務をやらなければいけないらしく、ここ最近は遅くまで残っているみたいだった。

「ミシンとかあれば、すぐできるんだろうけどねー。私も家にないしなぁ」
「いや……私不器用すぎてミシン使っても悲惨なことになりそう」
「それは……うん、否定できないかも」

私がどれだけ不器用か知っている采花は苦笑していた。

ミシンを使いこなせる自信もないし、中学校の時に家庭科の授業で使ったときは、あまりの速さと振動に驚いて、ものすごく歪なエプロンが仕上がってしまった過去がある。


「毎年作らなくちゃいけないのが本当苦痛だよねー」
「まあ、クラス変わるたびにカラーが変わっちゃうもんね」
「一、二年のときになった色だったら、楽できるんだけどね。未来とか三年間同じ色らしくて羨ましいよ」

残念なことに私たちは一年生のときは黄色で、二年生では緑。三年生では赤がクラスカラーだった。なので毎年ハチマキを自分たちで作っている。


「あ、やば。もう集まる時間だ。じゃ、行ってくるね!」

ミーティングに行く采花を見送って、放課後の教室でひとり黙々とハチマキを縫っていく。体育祭前日は校庭を使用した練習は禁止なので、学校は静かだった。


指先に感じた痛みに顔を歪める。またやってしまった。

どうしても針を使うことが苦手で、指に何度も刺してしまう。あともう少しだけ頑張れば、この針地獄から解放されると気合をいれると逆効果で歪んでしまう。



「あれ? 悠理、まだいたんだ」

とっくに帰ったと思っていた瀬川くんが教室に顔を覗かせた。




< 18 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop