花時の贈り物
体育祭当日は晴天に恵まれた。
本当だったら、采花と瀬川くんと楽しく迎えるはずだった。
それなのに朝からふたりと話していない。自業自得だ。采花に取られたくなくて抜け駆けなんてしたからだ。
ふたりと気まずくなってしまい、私はひとりで運動靴へと履き替えて昇降口を抜けていく。校庭の砂利を踏みしめた瞬間だった。
「あのさ」
誰の声なのかわかり、どきりと心臓を震わせる。
顔を強張らせながら、おずおずと振り返ると瀬川くんが立っていた。赤色のハチマキをぎゅっと握りしめて、逃げ出したい気持ちを必死に堪える。
「体育祭が終わったら……話があるんだけど」
昨日のことを思い出すと恥ずかしくて、頷くのが精一杯だった。
瀬川くんは少し気まずそうに視線を逸らして生徒たちが集まる方へと足を進めていく。その背中を私は見送ることしかできなかった。
そのあとすぐに采花が昇降口から出てきて、なんて声をかけるべきか迷っていると顔を逸らされてしまった。
胸がずきりと痛み、下唇を噛み締める。
采花を傷つけてしまった。
もしかしたらと思っていたけれど、やっぱり采花も私と同じように瀬川くんが好きだったんだ。三人での関係が崩れていく。きっともう戻れない。
今の私にできるのは瀬川くんからの話を待つだけ。そう思っていた。