花時の贈り物
***


卒業式当日、一人ひとり名前が呼ばれ卒業証書を受け取っていく。校歌を最後に歌い、校長先生の言葉で式を締めくくる。まだ泣いている人はいなかった。

二年生たちが作ってくれた花のアーチをくぐりながら体育館を出ていくと、すすり泣く声が聞こえてくる。

胸に桜色の花をつけながら、三年生たちは最後の授業を受けにそれぞれの教室へと向かった。


担任の先生へ贈る卒業アルバムは前日になんとか完成ができたようだった。

卒業式が終わったあとに教室で采花がクラス代表として渡すと、先生は涙を流しながら受けとってくれていた。


「こういうものを貰ったのは初めてだよ。ありがとう」

先生がクラスでの思い出を振り返り、別れの挨拶をすると泣き出す生徒もいた。

采花は涙を堪えているようで、背筋を伸ばしてしっかりと先生の言葉を聞いていた。


あたりを見渡すと教室からはいつの間にかみんなの私物は消えていて、掲示物も剥がされている。


本当に卒業なのだ。もうみんながここにくることはない。


少ししてカバンを持って教室からクラスメイトたちが出て行く。取り残された私は窓際の一番端っこの自分の席に座って空っぽの教室を眺める。


終わってしまった。もうここへ来ることは二度とない。

センチメンタルな気持ちに浸っていると、足音が聞こえてきてドアの方へと視線を向ける。


卒業おめでとうと書かれている花を胸に付けた瀬川くんが、こちらへ向かって歩いてくる。

瀬川くんはポケットから胸につけられているものと同じ卒業祝いの花を出すと私の机の上に置いた。



「悠理」

名前を呼ばれたのは久しぶりな気がした。

照れくさいけれど、心地いい。大好きな人の言葉に耳を傾ける。




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