クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
和生と愛菓の話し合いの末、

゛favori crème pâtissière ゛のオープンは2週間後となった。

その間に、愛菓のアシスタントとなるパティシエもしくはパティシエールと、カフェスペースで働くフロアスタッフを面接・採用する。

健一は、愛菓が移籍後は

愛菓目当ての固定客には、愛菓が゛favori crème pâtissière ゛で働き始めることを伝えると言ってくれた。

もちろん、これまでle sucreで愛菓が作ってきたカスタードをはじめとしたスイーツのレシピは、愛菓のものなので゛favori crème pâtissière ゛で販売を続けてほしいと、健一は言ってきた。

le sucreでも同じように販売してほしいと愛菓は言ったのだが、天才の作るスイーツと凡人が作るスイーツは゛似て非なるものだから゛

と健一は首を振った。

「私としては寂しくもありましたが、オーナーの言葉は゛いい得て妙゛だと納得する自分もいて・・・」

愛菓は、背筋を伸ばして、ポニーテールにしていた髪をほどくと、

「もう振り向くことはしない。この環境で、思う存分、自分のやりたいことだけを追求して見せます。覚悟はよいですね?和生殿」

と、スイーツナイフを手にしてニヤリと笑って和生に詰め寄った。

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