クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「これは・・・狼・・・ですか?」

「いえ、シベリアンハスキーです。和生殿にそっくりでしょう?」

ラテアートのシベリアンハスキーは、可愛らしくデフォルメされたものではなく、完成度の高いリアルな作品だった。

お世辞にもかわいいとは言えない・・・。

「表情がないとは言われますが、僕はここまでですか?」

「無表情なところがそっくりですね」

同じく無表情な愛菓に言われるとは納得がいかないが、これはこれでアートだ。

和生は、少し口角を上げて、そのラテアートをスマホに撮って保存した。

「私達も見せていただいてもよいですか?」

テーブル席に座っていた女子高生やOLが、ワラワラとカウンターに集まってくる。

「構いませんよ」

和生の許可を得て、カップを覗いた彼女たちの歓声が上がる。

「◯ンスタに上げてもよいですか?」

「私もラテアートリクエストしたい」

彼女達の言葉に僅かに口角を上げて微笑む愛菓もまた、シベリアンハスキーに似ていると、白人以外の顧客もスタッフも思っていたのは内緒だ。

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