クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
゛この人は完全に自分とは異なるスタンスで生きている゛

何でもこなし、何の感慨もなく、只、仕事で認められることだけに満足して生きてきた。

教師である父の目指すものも、それに付き従う母の姿も、和生にとっては平凡で面白味のない日常だった。

一方の愛菓はどうだろう。

この短い付き合いの中で、彼女が見ているものは常に他人の喜びだった。

スイーツを作ることで自分が評価されることに満足しているのではなく、顧客がいかにすれば喜んでくれるのか、がキーのようだった。

見返りを求めない。

その強さはどこから来るのだろうかと、和生は愛菓に興味をもった。

そして自分と同じクールな外見を覆すあの満面の笑顔。

゛それを自分に向けてはくれないだろうか?゛

それが、和生が物心ついた頃から初めて感じた恋心の芽生えだった。
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