クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
それから2日が経った。

゛favori crème pâtissière゛では、通常業務の間に、愛菓が世界大会の試作品を手掛けていた。

「愛菓は、いる?」

聞こえてきたフランス語。

店の入り口から入ってきた人物に、顧客からざわめきが起こる。

その人物は、愛菓がlouisから和生のフィアンセだと紹介された人物。

そう、あのフランス人形のような美少女だった。

「私はAlice。あなたが私のカズの魔法使いね」

アリスはズンズンとクッキングブースに近づくと、愛菓の作ったスイーツに目を輝かせた。

「wow!カズのいう通り、Très bien(素晴らしい)」

「Merci(ありがとう)」

愛菓はいつものクールさを崩さずに微笑んだが゛私のカズ゛と言う言葉から、アリスが和生とすでに面識があるのだと、内心は穏やかではなかった。

「実質、マサキと一騎討ちなんでしょう?私とカズはどちらを応援したらいいか迷うけど頑張ってね。そうそう、甘さ押さえ目のスイーツを頂ける?私はあまり甘いものが好きではないの」

好みまで和生と似ているのかと、愛菓は苦笑する。

「それでは゛Pouding adulte゛はいかがですか?おきに召していただけるかと」

「ありがとう。あれ?あなた、フランス人?とても素敵ね」

アリスは、ちらっと作業中の白人に目をやる。

「彼はフランス人のクオーターですが、フランス語は話せませんよ」

「oui、だから返事がないのね。外見がフランス人なのに日本語しか話せないなんて興味深いわ。あ、もう時間がない!明後日は楽しみにしてるわ」

アリスは風のようにやって来て、風のように去って行った。

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