クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
どの作品も仕上がりは抜群。

だが、製造工程、製菓の技術、仕上がりを見ても、マサキヨシザキと氷山愛菓の一騎討ちであることは明らかだった。

吉崎と愛菓以外の3名のプレゼンが終わった。

和菓子の巨匠、ベルギーの伝統菓子、イタリアのショコラを生かしたケーキなど、どれも大切な家族に向けた美しい仕上がりだ。

『それでは、続きまして、マサキヨシザキさんの作品です』

マサキが手掛けたのは

゛夢見る少年のお菓子の家゛

クッキーとスポンジで作ったお菓子の家にはカラフルなアイシングでデコレーションされている。

庭のパーツは、抹茶のお菓子やクリームでお花畑が再現され、中央には、プリンスとプリンセスと思われるドール人形が楽しそうに笑っていた。

『これは素晴らしい!まるで絵本の国から飛び出して来たようですね。どなたに捧げるスイーツなのですか?』

このスイーツコンテストはテーマとスイーツが合致していること、そして何より、制作者の想いが贈られる人間に伝わらなければ意味がない。

だからこそ、この言葉によるプレゼンが大きな意味を持つ。

マサキヨシザキはその点、人タラシというか、言葉巧みというか、愛菓と比べれば断然有利と言える。

「我が親愛なるプリンスとプリンセスに捧げる唯一無二の愛情を込めたスイーツです。これは、グルテンフリー、ミルクフリーのスイーツです。アレルギーのために大好きなスイーツを我慢してもらいたくはない。そんな思いを込めて製作しました」

彼は日系人とはいえ、国籍はフランス。

吉崎は、フランスの日本領事館お抱えのパティシエだったが、フランスの皇族の子孫に気に入られ、現在はその主君のもとでパティスリーを展開している。

その主君の娘と息子に捧げるスイーツが今回の作品となった。

『見映えは文句のつけようもありません。早く、その味を堪能したいですね』

『ありがとうございました。それでは、最後に氷山愛菓さんの作品です』

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