クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「Félicitations pour la victoire.Aika(優勝おめでとう!愛菓)」

「Je suis content de te revoir.(また会えて嬉しい)」

愛菓がコックコートのまま作品の前に佇んでいると、アリスとアレクサンドル皇子が目の前までやって来た。

二人の周囲には3名のSPと執事とおぼしき60代の男性が取り囲んでいる。

「ありがとうございます。再びお目にかかれて光栄です」

愛菓もフランス語で恭しく挨拶を返した。

「カズも私も貴方が優勝すると思っていたわ。嬉しくて手を取り合って喜んだのよ」

゛カズ゛

という言葉に心が痛む。

「このウエディングスイーツ、カズのような特殊な体質の人達も食べられるように配慮してあるでしょう?貴方の思いやりにみんな感動しちゃって。そうよね、審査員のアレクサンドル皇子?」

「姉さん、やめてよ。いつもアレクサンドル皇子何て呼ばないでしょ」

「姉さん?」

愛菓の疑問に、アリスは笑って答えた。

「ええ。アレクサンドル皇子は私の愛しい弟よ」

皇子が弟ということは、アリスは皇女。

二人が結婚すれば、益々、手の届かないところに行ってしまう和生に、愛菓は頭がクラクラしていた。

「大丈夫?愛菓。なんか顔色が悪いけど」

アリスの問いに、愛菓は首を振って

「ええ、大丈夫です。何度も同じスイーツを作って流石に疲れたのかもしれません」

「愛菓の作ったお菓子がまた食べられるなんて、僕は嬉しいばっかりだよ」

子供らしいリアクションのアレクサンドルに、愛菓も心が癒された。

「たくさん作ったので、たくさん食べてくださいね」

笑顔で立ち去る皇子と皇女の姉弟に手を振ると、愛菓は白人と阿佐美に断りをいれた。

「ごめんね。ちょっと体調が悪くなってきたみたいなんだ。挨拶も表彰も終わったし、先に帰ると社長と専務に後で伝えておいてくれる?」

「顔色が悪い。社長と専務には俺がちゃんと伝えておくから心配すんな」

「私もいますから心配ありませんよ」

白人と阿佐美の励ましに、愛菓は嬉しそうに弱々しく微笑む。

「ありがとう。ごめんね」

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