欠けてるあなたが大好きです。
「美冬ちゃーん!今日も来ちゃった!」
「ありがとうございます!」
「カウンター席座ってもいい?
料理してるとこ見てみたいんだ。」
「わかりました。端っこからお願いします!」
お客さんを席に案内するのを何往復かして、
今度は注文のためにあっちに行ったり
こっちに来たりする。
案の定イブさんを見て黄色い声を上げる人や
話しかけに行く人もいたけど、
イブさんが対応してくれて特に問題はおきてない。
「んじゃ俺仕事戻るね〜。」
「「「えー!」」」
イブさんの言葉に女性客が声を上げた。
「えーっと何ちゃんだ?」
「美冬です。」
「美冬ちゃん、また来るわ。
ナポリタン完璧だったよ☆
味も手際もね!」
「手際…?」
「あの機械カメラだからさ〜!」
「なるほど…?」
「美冬ちゃん、臨時じゃなくてガチで働いてよ。
ここが嫌ならsw-sw-sweetでもいいしさ!」
「あはは…。」
イブさん気づいてますか…。
あなたのおかげでわたし、
女性客にめっちゃ睨まれてるんです…。
早くお帰りになってお仕事してください…。
「文化祭、見に行くから
気合入れて準備してね☆」
ぼそっと耳元で囁かれる。
きっと文化祭に行くってことが
女性客にばれないようにするためなんだろうけど…。
睨んでただけだった女性客がこそこそと話し始める。
わたしの陰口決定。
げんなりしてるわたしとは裏腹に、
いい笑顔でお店から出ようとするイブさん。
「フウくんもばいばーい☆」
こう言いながらカランコロンッと
音を立てて去っていった。