欠けてるあなたが大好きです。

「…こんなもんか。はい、これ。」


その紙を琉奈ちゃんに手渡す。



覗き込んで見てみると、

いいところと悪いところが箇条書きで書いてあった。



「全体的にいい感じだったから

 そのまんまでも十分いいよ。

 余裕あったら直してほしいってとこ書いといた。」


「おけおけー!じゃあ次の人呼んでくる!」



「衣装汚す前に着替えろよ。」


「ほいほ〜い。」


紙を持った手をふりふりしながら

去っていく琉奈ちゃん。




「どうしてあんな紙を?」


「やるからには徹底的にしてーじゃん。

 その方がおもしろいし。」



「でも割と細かいとこまで見てたっぽかったじゃん。

 大変じゃない?」



「オレが誰か忘れた?」


自分の右目をとんとんっと指差す諒くん。


事情を知らない人から見たら

厨二病を患ってるようにしか見えないかも。




「あっ。」


サイコパスの能力を使ってるのか。


それなら普通の人が真剣に見ないと

わからないことも読み取れるよね。




「せっかく咲雪がこれだけ頑張ったんだ。

 オレが担当する接客班のせいで

 台無しにはしたくない。」


一瞬だけ無表情になって言ったこの言葉は、

諒くんの本心以外の何者でもない。



サイコパスだからって、

感情がないからって、

諒くんの中に優しさが0ってことではない。



彼の中ではなんとも思ってなくても。


なんとも思えなくても。


わたしには、相手には優しさが伝わるんだ。



< 293 / 357 >

この作品をシェア

pagetop