欠けてるあなたが大好きです。

「はい、咲雪。」


「え?」


諒くんが1口サイズのパンケーキがささった

フォークをこちらに向けてくる。


「口開けろ。」 


言われたとおりに口を開けると、チョコの味がした。



「ん、おいしい。」


もぐもぐと口を動かし、チョコパンケーキの味を楽しむ。




「じゃあ咲雪も。あーんして?」


「え!?」


言われてみれば

今の結構恥ずかしいことだったんじゃ…!?



何にも考えてなかった!



「ほら、早く。」


無防備に口を開ける諒くん。



ま、まじですか!?


「店内でいちゃつくのはご遠慮願いまーす!」


琉奈ちゃんが笑顔でちゃかしてくるし!


そのおかげでみんなこっち見てるし!



「まだ?」


「えー…。」


どうすればいいの…?





考えて考えて出た答えは…。


「あーん…。」


諒くんにパンケーキをあーんすることだった。


だってよく考えたら周りのみんなに

あーんするのかしないのかずっと見られてる方が

恥ずかしいと思ったんだもん!




「あま。

 もしかしていちごの方が生クリーム甘い?」


「ううん。

 多分チョコが苦めだから

 生クリームの甘さを消してるんだと思う。」


「なるほどなー。」



さっきのあーんなんてなかったかのように

普通に振る舞う諒くん。



わたしはまだ恥ずかしくて赤くなってるだろうな…。



感情がない分切り替え早くてずるい。





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