同じ人を好きになるなんて
まるで五年分を取り戻すように私は陸斗に抱かれた。

お風呂に入ると陸斗もついてきて声を殺しながら抱かれベッドに入っても陸斗は私から離れようとはしなかった。

気づけば夕飯も食べず、時計を見るともう日付が変わっていた。

まるで海外の映画のラブシーンのようだ。

横で綺麗な寝顔で陸斗が眠っているのを確認すると私はバスローブを羽織り窓辺に立った。

よく見るとまん丸いお月様が街を照らしていた。

だけど私は素直に綺麗だとは思えなかった。

満月の夜は人を変える。

良くも悪くも……

私は眠っている陸に視線を向けた。

大好きな人と愛し合うことがどんなに幸せなのかは自分自身がよくわかっている。

にも関わらずどこか後ろめたい気持ちがあるのは

やはり奥さんの影とりっくんの存在なのだと気づいた。

私がどんなにりっくんに愛情を注いでも本当のお母さんには敵わない。

どんなに離れた場所にいても凛子さんのりっくんを思う気持ちはあの写真集を見ただけでわかったからだ。

りっくんが私に懐いてくれるのは多分、今だけだと思う。

それにこの先一緒にいたらりっくんは私と凛子さんの間で苦しむんじゃないか。

そう思えてならなかった。

もちろん、陸斗と一緒にいたい気持ちはある。

だけど私はそんなに強くはない。

だって一度は陸斗から逃げたんだもん。

どうするか……真剣に考えないといけないのかもしれない。
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