同じ人を好きになるなんて
「まゆり?」

「え?」

「何ぼーっとしてるの?せっかくの二人きりの時間はもっと有効に使わないと。こっちにおいで」

躊躇しながらも私は陸斗の隣に座った。

すると陸斗は私の首筋にキスをした。

「ちょ、ちょっと陸斗何するの?」

「何って……二人きりの時間を楽しんでるんだろ?」

耳元で甘く囁く声がくすぐったい。

「え?でもまだ日も沈んでないじゃない。私夕飯の準備に––キャッ!」

耳に息を吹きかけられへんな声が出てしまった。

「夕飯なんていい。俺はまゆりが食べたい」

「そんな……あっ……やっ…‥り、陸斗……やめてっ」

耳に舌を入れる陸斗に必死に抵抗するが、私の弱いところを狙うから力が入らない。

「知ってるか?やめてっていうのは…‥裏を返せばやめないでって言ってるのと同じなんだよ」

そ、そんな……

陸斗のキスは耳から私の唇へと移動した。

そして抵抗できないぐらいに甘くとろけるキスに私は抵抗するのをやめた。

だけど……私の心はどこか別を向いていた。

このままでいいの?

私はずっと陸斗のそばにいていいの?

陸斗に愛されてるのに私には不安しかなかった。
< 172 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop