同じ人を好きになるなんて
りっくんと凛子さんのパリ行きが急に決まり慌ただしい日が続いた。

諸々の手続きは全て凛子さんが行って、私は日々の家事をこなしつつこの家にあるりっくんの荷造り作業をした。

もちろんその間もりっくんは保育園に通っていたのだが……

保育園児にしてスーパーモテ男子のりっくんがいなくなることは他の園児たちに衝撃を与えた。

「なんで外国に行っちゃうの?結婚するって言ったじゃない」

「私も一緒に連れてって」

大人顔負けのセリフに私の目が点になる程だった。

だけど将来のハイスペック男子は言うことが違う。

「ごめんねみんな。でも僕ちゃんと帰ってくるよ。だって僕はここが大好きだから」

王子様らしい言葉に女の子たちからの待ってるコールがすごかった。

保育園でもこんなりっくんのためにお別れ会を開いてくれるそうだ。

凛子さんも出版社との打ち合わせをしながら各種の手続きで大忙し。

なので今はこの家で過ごしている。

荷造りといってもあまり多くの物を持っていくつもりがないらしく、りっくんの服も必要なもの以外は置いていくと言うのだ。

「だけどここにずっと置いておくわけにもいかないだろ?理人は大きくなるんだし」

あまりの荷物の少なさに陸斗はかなり心配しているようだ。

< 188 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop