同じ人を好きになるなんて
陸斗がイケメンだから女性が放っておくわけがないことはわかっていた。

だけど学生の頃はもう公認のカップル扱いで邪魔が入ることもなかった。

ところが就職して交友関係ががらりと変わった途端、陸斗の周りが騒がしくなった。

偶然見かけた陸斗に声をかけようとしたらモデルのような女性が陸斗の腕にしがみつきながら歩いていた。

陸斗もまんざらじゃない表情に見えた私のイライラは限界にきていた。

「だから、あれはそんなんじゃない。下手に拒絶してクライアントを怒らせるわけにはいかないんだよ」

女性と腕組みして歩かなきゃ仕事がもらえないの?

仕事ってそういうものなの?

「だったらクライアントが無茶な要求をしてもそれが仕事ならなんでもする。そう言いたいわけ?」

あの時の私は社会人になりたての彼の必死さがわからなかった。

私の目には単に広告代理店という仕事が華のあるキラキラしたものに見えた。

だから彼氏といえ、羨ましかったし、妬ましかった。

「無理」

「え?」
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