同じ人を好きになるなんて
あまり思い出したくはないが、付き合うようになって陸斗が度々泊まりに来ていた。

その時はシングルのパイプベットだった。

いくらラブラブな二人といえど狭いベッドでの寝心地はいいものではなかった。

そんな時たまたま立ち寄ったインテリアショップで素敵なセミダブルのベッドが展示してあった。

陸斗と私はそのベッドに一目惚れ。

お値段もお手頃だったので二人でお金を出し合ってセミダブルのベッドを買った。

本来ならば別れた後にすぐ処分するべきものだったのだがどうしても捨てられなかった。

もちろん未練があるからではなく、単に気に入ったベッドが見つからなかっただけ。

陸斗は見覚えのあるベッドを時―っと見つめていた。

たが何も言ってこなかった。

一人暮らしの荷物はそう多くない。

引っ越し業者の車も小型のトラックで入りきらないものは陸斗の車のトランクに入れてもらった。

そして住み慣れた部屋は空っぽになった。

新築で入ったワンルームのおしゃれな部屋。何もなくなると広く感じた。

居住年数は六年ちょっと。

会社が倒産しなきゃずっと住む予定だったのに……でも今更文句を言っても仕方がない。

「忘れ物はないか?」

「はい」

私は部屋を出ると住み慣れた部屋に一礼をして鍵をかけた。
< 46 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop