君がキライなそのワケは
「……んでため息ついてるの?」
「ためいきなんか」
「ついてるよぉ? ほら今も……さては恋してるねぇ」

意地悪く、でもどこか嬉しそうに富美が顔を覗き込んできた。

「太郎さん、そんなにイケメンなんだ?」
「うん、まぁ」
「そっかそっか」

さっきからすごくニコニコしてるけど。
富美ってば絶対楽しんでる。

「話聞いてたら脈アリっていうかほぼ両想いっぽいけどなぁ」
「うーん、どうだろ」

確かにすごく優しくしてくれるし、頭ポンポンもしてくれたけど。
でもこれってなんか妹? 下手したら弟扱いされてる?って感じる時あるんだよなァ。

「莉子ちゃんはもっと自分に自信をもって……」

その時。
昼休みの教室のドアの方から小さなざわめきが起こった。

女の子達がザワザワ、ソワソワと何やら色めいている。
思わずその方向を見れば、教室の入口に目立った人物が立っていた。

「……見ない顔だなァ」
「莉子ちゃん、不良っていうか番長っぽーい」

富美が小さく笑う。
でもほんとに見たことない顔だった。
それでもなんか見覚えがあるような……いや誰かに似て。

「……あ」
「?」

ジロジロ見ていたからだろうか。
目が合った。
するとその男子生徒は真っ直ぐにこちらに向かって歩いてくる。

(なんだコイツ)

彫りの深い顔は整っている。
ハーフかクォーターだろうか。
長い睫毛は大きな目を彩っており、そこらの女子生徒か羨ましがりそうなくらい際立っている。
分厚めな唇。

(ヤンキーかチャラ男かよ)

染めた髪にピアス。
服装からしてチャラそうで私の嫌いなタイプの男だ。

「………」

近づいて分かったが、この男子生徒も背が高い。

(190はありそうだ)

「……アンタが木城 莉子だな」


< 6 / 32 >

この作品をシェア

pagetop