俺の、となりにいろ。

「ありがとう。二つも食べちゃっていいの?」
「咲さんはゴールデンウィーク前は忙しいから、ちゃんと糖分を摂らないと」

奈津美の優しい心遣いに、私は毎年こうやって励まされて乗り越えてきた。

奈津美が部屋を出ようとドアノブに手をかけた時、思い出したように「そういえば」と言いながら私を見る。
「昨日の夜、政樹さんと向こうの通りの居酒屋へご飯に行ったんですよ。その時…」

──え?

その後の奈津美の言葉に、私の頭の中が白く染まっていった。
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