俺の、となりにいろ。
そして秀人からも苗字のことを聞かれた。
私は六年前に両親が離婚したこと、苗字を母の姓に変えたことを話すと、
「なるほど」
と、妙に納得されて頷き続ける彼が可笑しくて、笑ってしまった。
七年前は、本当にお互いを知らずに、ただ体を重ねただけだった。
今まではその思い出だけで十分だと思っていたのに。
今は、秀人と一緒にいる時間を大切にしたいと思うようになっている。
彼が離れていく、その日まで。
そう思うのは、一日数回鳴る、スマホの着信音が気になったから。
その夜も、秀人と一緒に、彼に抱きしめられて眠った。
「咲」
と、ハスキー声に呼ばれて、胸の中にある安心感を味わってしまった私は、「桐谷秀人」という人間の虜になってしまった。